最後の雨 52
ハニの傍に居させてくださいと言えなかった。
オレとお義父さんが病室に戻った時にハニは目を覚ました。
「パパ・・・・・ゴメンなさい。」
オレがいる事を判っているのに、オレの方を見ないでお義父さんに謝っていた。
それがその時のハニの気持ちだったのだろう。
いつもオレだけを見ていたハニが、オレを見ないという事は、オレを拒否していることがよく判った。
「ハニ・・・・オレ・・・・帰るから・・・・・」
オレの言葉に何も答えず、オレもまたそれ以上は言わないで病室を出た。
その後にお義父さんとハニがどんな話をしたのか、お義父さんと談話室で話していた事で大体想像がついた。
「スンジョ・・・・ハニちゃんと一緒にいなくていいの?」
オレはお袋にも、何も言わなかった。
「ハニや、 具合はどうだ?」
「うん・・・大丈夫。本当にごめんなさいパパ・・・心配をかけて。」
「全くだよ、パパを一人にさせるつもりか?」
ハニはギドンが“スンジョ君がいるのに、どうしてこんなことになったのだ?”と言わないことが不思議で、また何か言われるのだろうと不安になった。
「落ちた・・・のか?本当のことをパパに言ってくれんか?」
「どういう事?」
「最近のハニとスンジョ君の様子が可笑しいことは知っていた。ハニはスンジョ君のことで、不安になっていたんじゃないか?」
パパは知っている。
スンジョ君と話もしない程に溝が出来ていることと、私が海に飛び込んだこと。
「死ぬほどか?」
「死ぬつもりはなかったよ。」
パパと目が合わせられない。
死ぬつもりなど本当に無かった。
ただそこに海があって、スンジョ君に嫌われたのなら生きているのが辛くて、このまま海に飛び込んだ方がもっと楽な気がしていた。
「辛いか?」
「えっ?」
「スンジョ君が勉強で大変で、ハニの事に構っていられないのは大変か?」
「そ・・・・それは・・・・・・」
「三年・・・・これからスンジョ君の勉強はもっと大変になる。ハニの勉強も今まで突いて見ていてくれたろ?深夜過ぎにパパが帰るよりも遅くなっている時もあった。聞けば他の連中は学校に泊まり込んでいたのに、スンジョ君は結婚をしているから、妻であるハニがいるから家に帰らないといけない。一時帰らない日もあったが、それは仕方のないことだ。みんなは自分だけ頑張ればいいが、スンジョ君は結婚したからハニのことも考えないといけない。疲れて帰って来て、ハニの勉強を見て、また次の朝に早い時はパパが買い出しに行く時に一緒に出て行くこともある。そんな時ハニはどうしていた?」
「寝てた・・・・・」
「あと三年経ったら卒業だ。もちろんその後も、パパはよく判らんが研修に行ったり夜勤だったり急患が来たりして、家に帰るのも無理な時もある。スンジョ君は真面目で妥協をしない男だ。完璧にハニと一緒にいようと思っても、時間が足りないと口に出したくても出せない。そんな時ハニが大学の誰々がどうだとか、誰々と学校帰りにお茶しただとか、そんなことを聞いても黙っているけど、疲れが溜まって来ているこの頃は辛そうな顔をしていたよ。」
「うん・・・」
判っていたギョル達と話をしている時はすごく辛そうにしていた。
でもどうしたらいいのか私には判らない。
「なぁ・・・ハニ、スンジョ君の勉強が落ち付くまで、そうだなスンジョ君が大学を出るまで別居してみたらどうかな。 」
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