最後の雨 55
看護学科との合コンに、医学部の連中の浮かれた様子を見ていると、気分が乗らなオレは、まるで別世界にいるような気分だ。
「おい、行かないのか?お前の奥さんが計画を立てたんだろ?」
「ぁあ・・・・家で片づけることがあるから。」
片付ける事なんてない。
ハニの顔を見たら、連れて帰りたくなってしまう。
勉強を理由に別居していることなんて誰も知らないから、オレが行かないとおかしいとは思わないだろう。
「いいのか?今日もあの看護学科の熱血君が奥さんと仲良く話をして歩いていたぞ。」
熱血君・・・・あいつか・・・・
「いくら奥さんが高校の時からお前一筋で熱々の新婚だからって、毎日毎日同じ教室で同じグループで一緒に行動していたら、家に帰れずに愛妻を放っておいて仕方なくとはいえ、毎晩大学に残って研究をしているお前に、愛想尽かしちまうかもよ。」
「それならそれだけのことだ・・・・・じゃ・・・・・」
「おい・・・・・おかしなやつだ。」
海に行く前だった。
合コンの場所をどこにしたらいいのか、とオレがレポートで忙しい時に、オレの態度を気にしながら聞いて来た。
「皆ね、スンジョ君が来てくれるのを待っているから、スンジョ君が行きたい所でいいよ。」
「お前が決めた所なら、どこでも行くよ。オレはそう言ったことには興味がないから。」
「約束だよ、約束だからね?来てくれないとみんなに怒られちゃうから。
「判ったよ。レポートを仕上げるから、それが終わったら必ず行くよ。」
あの時のハニの瞳はオレしか映していなかった 。
スンジョは医学部棟をから出ようとした時に気が変わったのか、教室に戻ると、さっきスンジョに話しかけた仲間が驚いた。
「行くよ・・・・」
「いらっしゃいませぇ~」
「あの・・・パラン大学看護学科の・・・・・・」
「ご予約の方ですね・・・どうぞこちらに。」
夕方の混み合う時間よりも少し前とはいえ、学生で人気の店だけあって既に店内は混雑している。
医学部の授業は看護科よりも授業数が多いから、きっと今頃に終った頃だろう。
個室に案内されると、ミンジュとヘウンが楽しそうに座席のくじを置いていた。
「この席はペク・スンジョ・・・・やっぱり上座は彼よね。」
「私の席はここ・・・・・向かい側じゃなくて、離れた所から彼を観察するの。」
「勝手に席は決めないでよ。」
いつものミンジュとヘウンの会話。
スンジョ君は来るのかどうかわからないのに・・・・・
「バッカじゃねぇの?くじを引くのなら、どこになるのか分かんねぇだろう。」
「「いいの!彼だけは固定の席よ!」」
集まり始めた人たちに、作った座席くじを引いてもらっていると、医学部の人たちが来るのが判った。
「お待たせしました!」
開けられたドアの方を、スンジョ君が来てくれることを願って振り向いた。
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