最後の雨 65

朝帰りどころかお昼近くに家に帰ったのは生まれて初めて。

それに、パパに大きな嘘を吐いたのも初めて。

「ハニや~今帰りかぁ?」

店の入り口に近づいた時、ドアが開いてジュングが顔を出した。

「シェフ!ハニが帰って来ましたぁ~」

ジュングの大きな声にちょっと後ろめたさはあったけど、嘘を吐いたのは私。

「ささ・・・入りやぁ~」

ジュングが背中を押して店の中に入ると、クリスが睨んでいた。

「そんな大きな声出して、ハニが恥ずかしいでショ。」

ちょっと前まではジュングとクリスの仲が良いのが羨ましかったけど、今はそんなことは思わない。

スンジョ君は、まだ自分の気持ちを表現することがすごく難しくて苦労していたことを知ったから。

「お帰り、看護学科の友達の家は近かったのか?」

「う・・・うん・・・朝ご飯まで食べてごちそうになっちゃった。」

「そうか、今度店に呼んで礼をしないとな。」

「お礼はいいよ、小さな子じゃないから自分でちゃんとするから。部屋に行ってるね。」

さすがに店に呼んだら、バレちゃうよね。嘘を吐いたら最後まで吐かないといけないって・・・・よくパパが言っていた意味が解る気がする。

でも、鞄はどうしよう・・・・・スンジョ君が、店の近くまで送ってくれたけど、ミンジュたちまさかスンジョ君の家に持って行ったりしていないよね・・・・・・・

食べずに飲むからいけないんだ。

ただでさえお酒に弱いのに・・・・・

鞄が無ければ携帯もない。

当然ミンジュやヘウン達に連絡が取れない。

別居していることを看護学科の人たちに知れたら、またスンジョ君と喧嘩になりそうだ。

「あ~どうしよう~」

ギドンは娘の嘘に気付いてはいない。

ただ、スンジョと別居してから塞ぎがちだったハニが、帰宅した時に目が生き生きとしていたことを看護学科の友達との飲み会が楽しかったのだと思っていた。

「いらっしゃいマセェ」

クリスの明るい声で客が来たことをギドンは気が付き、最初の客の注文が受ける事が出来る様に仕事に取り掛かった。

「あら!クリスちゃん、今日はこちらでお手伝い?」

「ソウです。ジュングと一緒に来ました。シェフ呼びますか?」

「ハニちゃんは帰っているかしら?」

グミはスンジョが帰宅してから、ハニがギドンに自分と泊まったことを言っていないことを聞いていた。

「ハイ、いますよ。呼びますね。」

クリスがハニの名前を呼ぶと、ハニはすぐに部屋から出て急いで一階に降りて来た。

「ハニちゃん、久しぶりに会えたわ。」

「お母さん・・・・・・」

ハニの姿を見るや、グミは駆け寄った。

厨房の奥にいるギドンとちょっと頭を下げて挨拶をすると、グミは小さな声で話した。

「ハニちゃん、ちょっと出られる?渡したい物があるの。」

グミが持って来たペーパーバックを掲げた。

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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