最後の雨 70
「ジュング・・・・・ハニが・・・」
「うん・・判ってる、ここをクリスに後は任せたから・・ちょっと行って来る。」
グイグイとギョルに引っ張られて、掴まれている手首が痛くてハニは顔をしかめた。
大股で歩く長い足のギョルに、小走りに付いて行くのがやっとで、何度も転びそうになっていた。
「どこに行くの?離して・・・・手がいたいから、離して・・・・みんなが見てる・・・・・・」
学食からハニが連れて行かれた場所は、校舎裏の誰もいない静かな場所だった。
「ねぇ・・・ギョル・・・・待って・・・」
ハニは、無言のギョルが怖く、また誰もいない校舎裏にいる事でこれから起こる事で自分の人生が変わるような気がした。
「ここでいい・・・・」
掴んでいた手を一度離したギョルは、ハニの手首を見て申し訳なさそうな顔をした。
「ゴメン、強く握り過ぎたな・・・赤くなってる。」
「酷いよ。何も言わないで、こんな人がいないところに連れて来て、何をするつもりなの?」
「人がいないところなら、邪魔もされないし話しやすい。」
いつもと違うギョルの表情に、ハニは怖くなってゴクリと唾を飲み込んで後退りした。
「オレはお前の旦那とは違う。言いたいことはちゃんと言う。」
ギョルの迫力に、ハニは後退りをしていたが、建物の壁に当たり行き場は横に動くだけしかなかった。
「逃げるなよ。」
ギョルの長い腕が、ハニが逃げられないように、ドン!と壁に手を突いた 。
「オレの気持ちを知ってるだろ?」
ハニは怖くて、首を横に振る事しかできない。
「知らない振りをしているのか?お前は知らない振りをしているのか、それとも本当にオレの気持ちを知らないのかどっちだ?」
目を合わせないで、ただハニは何度も首を横に振っていた。
ギョルの手に当たるのはハニの涙なのか、降り出した雨なのかポツンと落ちた。
「返して・・・・・・・ここから出して・・・・・」
「出さないよ。オレの気持ちを言うまではここからは出さない。」
怖い・・・・怖いよ・・・・スンジョ君・・・・来て・・・
助けて・・・
「アイツと別れちゃえよ。別居しているんだろ?」
「知ってるの?」
「やっぱり・・・・・ハニの鞄を届けた時に、アイツのお袋さんが言ったことで、そう思っただけだ。当たりだったんだな。」
「オレは、アイツよりお前を幸せにする自信はあるし、お前に不安な思いをさせたりしない。 」
ガクガクと震える足に力が入らなくなったハニは、立っていることが出来なくなってその場にしゃがみ込んだ。
そのしゃがみ込んだハニの肩に手を触れようとした時、誰かに身体を押された。
「何を!」
その声にハニは恐る恐る目を開けると・・・・・・・・
「クリス、すまんかったな。」
「ジュング、大丈夫だった?」
「あぁ・・・もう大丈夫だ、ハニもペク・スンジョもな。」
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