最後の雨 72
うふ・・うふふ・・・・
スンジョに肩を抱かれて歩くのが、ハニにしたら結婚してからと言うよりも、出会ってから初めての事で嬉しくて仕方がないのか笑いが止まらない。
「どうした?」
「夢みたい・・・」
「夢みたい?」
医学棟に行く途中の建物の陰にハニを連れて行き、ほんの少し雨宿りをするつもりだった。
「スンジョ君が迎えに来てくれた・・・・・・・」
「必ず行くって言ったはずだ。」
ハニは嬉しくてうれしくて仕方がなかった。
「迎えに行くって言ってくれても信じられなくて、それと同じくらいスンジョ君が、本当は私の事を好きじゃないとも思ってた。」
夢じゃないことを確認するように、スンジョに抱き付いて広い背中に手を廻した。
「って!なんで背中を抓るんだよ。」
「だって自分の身体だと痛いもん。」
「だからって、オレの背中を抓るなよな。」
この痛さがスンジョにも夢ではなく、大変なことをしてしまったことを思い出させた。
「まずいな・・・・・」
「どうかしたの?」
「いや・・・・ジュングがオレの所に来て、そのままハニを探しに来たけど・・・・・・授業が始まる直前だった。」
「た・・・大変。すぐに行かないと。」
「もう遅いよ。あと数分で授業が終わるよ。それよりも大人数の前でハニがいないと寂しいと言ってしまったよ。」
ハニはその時の事を思い出して、恥ずかしいような照れ臭いような気がしたが、スンジョの口から出た言葉が嬉しくて仕方がなかった。
「スンジョ君・・・・私と似て来たのかな?今までのスンジョ君なら、どんな状況でも話す前に頭の中でまとめてから言うけど、後先考えずに言うスンジョ君・・・・・・・ふふ・・ふふふ・・・・」
「何だよ・・・その笑い。」
「あのね・・・・・・」
スンジョの腕を引っ張り、ちょっと背伸びをして耳打ちした。
「やっと人間になれたね。ご褒美を上げるね。」
ハニはスンジョの口に軽くキスをした。
「オレからもハニにご褒美だ 。」
スンジョは下げていた手を上に上げて、そっと片方の手を頬に当てた 。
真剣なスンジョの眼差しに、ハニはほんのりと頬を赤らめて目を閉じた。
____ビシッ!
「いったぁ~い。凸ピンすることないじゃない。」
「オレが人間になれたし、ハニが家に帰って来る事のお祝いだ。」
ニヤッと笑ったスンジョは、ようやく心の底から寛げる気がした。
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