最後の雨 73
大騒動のあった後に、自分はスンジョの気持ちを知って浮かれていいのかハニは迷っていた。
教室の入り口に立っていると、いつもと変わらない看護学科の仲間の話し声。
入りにくい・・・・
あの場所にいたのはギョルだけじゃなかった。
ミンジュもヘウンもヒスンもいた。
そのほかにも看護学科や医学部の人たちもいた。
大丈夫だ。
世界中の人がハニを理解しなくても、オレ一人はこの命が尽きるまでハニを理解するし守るから。
もう二度とハニを苦しめないし悲しませない。
ハニにオレは本当の愛を教えてもらったよ。
自分の非を認めて、早くそれに気づく事。
自分だけの所為、相手の所為はどちらも傷がつく。
一人で悩まない。
ハニが間違っていれば間違ったと言うし、それをオレにも言って欲しい。
男は間違っていなくても謝らなければならないことは間違いかも知れないが、ハニの気が済むのならそうする。もし、本当にオレに付いて来てくれるのなら、ハニが信じていることが真実だからずっと付いて来て欲しい。
だけど真実ではないことを信じてしまって離れるのなら離れても構わない。
嘘を吐けば嘘を吐き続けなければいけなくなるから、間違いに気づいた時はその時に自分の非を認めないといけない。
オレを信じて堂々と顔を上げて前を向いて歩いて行こう。
スンジョが別れ際に言った言葉をハニは思い出していた。
「忘れっぽい私が、多分一文字も抜けずに覚えていることが出来るのなんて、さすがスンジョ君天才ね。私にはスンジョ君が付いていてくれるから大丈夫。ちゃんとギョルとも話すよ。」
ハニは大きく深呼吸をして、口角をキュッとあげていつもの笑顔で教室のドアを開けた。
「ギョルさぁ・・・・あんたの気持ちもわからないわけじゃないけどさ、ハニは結婚しているんだし、ペク・スンジョ以外を愛せないと思うよ。あんたが心配しているのも判るけど、ハニは自分に自信がないから、旦那の視線が気になってるだけ。忘れろとは言わないけどさ、あの二人を見て私達には入り込めないって、いい加減に気が付かなきゃ。」
「そうそう、ミンジュの言うとおり。私が可愛い女の子紹介するから。」
ミンジュ達に励まされているギョルだが、口を開こうとしない。
「ギョル、元気出してね。」
何時もあまり会話に入って来ないヒスンも、大勢の人の前でのあのやり取りで、結局バカを見ただけの落ち込んでいるギョルを励ました。
ガラッとドアが開く音がするとそちらに一斉に視線が移った。
「ハニ!」
その言葉にギョルはビクッとしたが、平静を装って教科書を見ていた。
緊張しながら、ハニがギョルの方に歩いて来るのを、ヘウン達以外の看護学科の人たちは見ていた。
「ギョル・・・・・・」
ハニの問いかけにも返事をしようとしない。
「ゴメンね・・・私のことを心配してくれていたのに・・・・私ね、スンジョ君と別れない。ギョルの気持ちを受けることは出来ないし、同じ看護学科の仲間として一緒に看護師になるって言うのはダメかな?」
__バンッ!
話し声を止めるほどに大きく音を立てて本を置いた。
「ゴチャゴチャ五月蝿い、看護師に本気になるのなら、もっと勉強をしろよ。」
いつも通り、ハニに怒鳴ったギョルに、いつもならビクビクとしていたが、今日のハニはそれが嬉しかった。
「ギョル・・・・・・ギョル・・・・大好き!」
「その言葉は旦那だけに言えよ。ほら、先生が見えた、もう座れよ。」
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