最後の雨 77
「お先に、スンジョ君もすぐに入るでしょ?」
シャワーを浴びて、化粧っ気のないハニの白くてなめらかな肌は、精神面でもすぐに変わる。
ほんのり赤い顔は、湯で温まったからではなく、この狭い部屋でオレと二人っきりでいるからだ。
「先に眠っていてもいい、オレはレポートを纏めないといけないから。」
「私の所為?私がギョルと・・・・・」
ハニのこのなめらかな頬に触れるのが好きだ。
スンジョは軽くハニの頬に手で触れた。
ハニはスンジョの熱い視線に静かに目を閉じて、唇に触れられる感触を待っていた。
「へっ?」
期待していた感触とは違う温かくて大きなスンジョの手が、ハニの唇に当てられた。
「今ハニにキスをしたら、ずっと触れていなかったから自制が聞かなくなるよ。レポートが遅れていたのはハニの所為じゃないから。ただ自分の心の中の問題であって、纏められなかっただけだよ。」
フッと笑うハニの顔に、身体がゾクゾクっとして来た。
ハニの使った後のシャワールームのドアを開けると、湯気が顔に当たりそれさえも幸せに思えた。
今までは、ハニが「寂しいから早く出て来て」と言っても、風呂を早く出て来たことも早く出ようとも思ったことなどなかったが、今日は一秒でもハニの傍から離れたくなくて、急いで頭から足まで全身を洗った。
乾いたタオルで頭の水気を取り、ドライヤーで乾かして、いつもはしっかりと乾かすのだが、今日は湿り気がまだ残っていたが、ハニの顔が見たくて急いでバスローブを合わせて紐で縛った。
きっと眠っているだろうと思いながらも数パーセントの確率で、ハニは眠い目を必死に開けていた。
「早かったね。」
「お前も、眠らないで起きていてくれたんだ。」
内心とは反対にこんなことを言っても、オレが遅くまで起きている背中に、ハニのパワーを受けて遅れを取り戻したくなる。
「何だか眠れなくて。」
「オレはお前とは反対で、眠りたいけどレポートを纏めないといけないからな。」
パソコンを出して、起動させている間もスンジョはハニの視線を受けられると言うことが嬉しくて、このままハニを抱きしめて、ベッドで朝まで眠りたい気分になった。
カチャカチャと打つキーの音だけが聞こえる部屋の中。
無言でいる二人でも、それがこの間までの二人とは違う。
それは、スンジョにもハニにも判る。
その空気が温かくて、優しくて気持ちが落ち付いて来る。
どれくらいの時間が経ったのか、思った以上に早く進んだ作業に、パソコン画面下の時間を見ると、パソコンの電源を入れてから一時間半だった。
もうハニは眠っただろうと思ったが、視線をずっと感じているような気がする。
「まだ起きていたのか?」
「うん・・・・・・スンジョ君のことを見ていたくて。」
メモリースティックに保存をして、電源を落とすと大きく伸びをしてハニの方に向いた。
「終わったの?」
「ああ、あとは明日大学に行ってからじゃないと出来ないから・・・・・寝たいから横に入ってもいいかな。」
「いいよ。」
ハニはスススッと横にずれて掛け布団を上げた。
ニコッとハニが笑うとスンジョもニコリと笑って応えて、無言で布団に入った。
「さすがにシングルベッドで二人は狭いな。」
「結婚する前にスンジョ君が一人暮らしをしている時に、ほら・・・雨の日に泊まった時・・・・」
「ああ、判るよ・・・・・・」
「あの時は、シングルベッドだけど広かったね。背中を向けてスンジョ君が眠っちゃったから。」
「眠っていなかったよ。」
「起きていたの?」
「そりゃ・・・・・・ある意味気になる女の子が隣にいれば、いくら平気な顔をしていても眠れるわけがないだろう。」
「今は?」
「眠い・・・・・・すごく眠い・・・・・ずっと眠れなかったから・・・・・」
「私は眠れなかったけど、全然眠くないよ。」
狭いベッドだけど、ハニが久しぶりに横にいるだけで、気持ちが緩んだのか眠りが強くなって来たスンジョは、グッとハニを抱き寄せて久しぶりに、ハニに熱いキスをした。
唇を離したと思ったら、スンジョは余程眠れなかったのか、ハニの唇の感触を確認したらそのまま何も言わず眠っていた。
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