最後の雨 79
「お帰り~ハニちゃん・・・・・・あなたがいない間、とぉっても寂しかったわぁ~」
グミは、ハニとスンジョが家に入ると同時に、ハニに抱き付いて来た。
「お母さん、ただいま・・・・・・また、お世話になります。」
「何を水臭いことを言っているのよ。お世話になりますって・・この家はハニちゃんの家でしょ?ご飯は食べた?」
「軽く・・・・食べました。」
スンジョが嫉妬するくらいにハニを独占したくて仕方のないグミは、手が離れないようにしっかりと握ってリビングまで引っ張って来た。
「お茶を入れるから待っていてね。お菓子も焼いたのよぉ~。もう、ハニちゃんがいないと何も張り合いがなくてね、クッキーやらマフィンやらシフォンケーキを焼いても、スンジョもウンジョも食べてくれなくて・・・・・でも大丈夫よ。今出すのは、今日焼いたものだから。 」
パタパタとスリッパの音を立ててグミはキッチンに入って行った。
「ハニがいない間、オレだけじゃなくて、お袋もウンジョも親父も寂しがってた。」
「家族みたい・・・・」
「オレと結婚しているんだから、家族だろう?」
「ふふ・・・・・スンジョ君・・・・・大好き。」
「オレも好きだよ。」
「いいわぁ~、スンジョが初めてハニちゃんに好きだと言っているのを間近で聞く事が出来て、私は世界で一番の幸せ者ね。」
焼きたてのオレンジマフィンと紅茶を持って戻って来たグミに気が付かなかった二人は気恥ずかしい気持ちになった。
「スンジョ君・・・・スンジョ君はコーヒーが飲みたいって言ってたよね・・・・淹れてくるね。」
二人の話を聞いていたのをグミに聞かれて顔を赤くしたハニは入れ違いに、スンジョのコーヒーを淹れる為にキッチンに行った。
「お兄ちゃんも、いい顔をしているわね。」
「ああ・・・・すごく幸せだ。ハニがいてくれるだけでオレはそれだけでいいんだ。もう雨は降らないから。」
「雨?」
「ハニとオレの記念の時はいつも雨が降っていた。だけど今回みたいに悲しい思いをさせる雨はもう降らせない。ハニの涙はそんな雨と同じで、沢山流させてしまったから・・・・・・・最後の雨にしたい。」
「そうね・・・・・」
キッチンでコーヒーを淹れているハニの顔を、スンジョとグミは優しい眼差しで見ていた。
「お兄ちゃんたちも、夫婦としての絆を深めたみたいね。」
一つづつ二人で乗り越えている息子と可愛い嫁に、今以上の幸せが来ることをグミは祈っている。
「あとはあなたとハニちゃんの間に可愛い赤ちゃんが出来るのを待つだけね。」
「まだオレ達は学生だ。ハニも看護師として仕事を始めて慣れるまでは無理だ。」
「早く欲しいのに・・・・・あなたとハニちゃんが結婚をしたら、次は可愛い孫をこの腕に抱くのを楽しみにしているのよ。」
ハニとオレを付き合わせることを、いろいろ企んでいたお袋。
最初はそれでも、いつ頃なのかオレのハニへの思いに気が付いたころからは、結婚をさせたがっていた。
結婚がしたいとオレが言えば、わずかその二週間後には結婚式を挙げていた。
お袋の思う壺にはハマらないつもりでいたが、結局は思う壺にハマってしまうのかもしれない。
待ってくれよ、お袋。
オレ達はまだ、夫婦として歩き始めたばかりだ。
親になるにはオレもハニもまだ時期は早い。
ハニに似た可愛い娘が欲しいから、いつかお袋の願いを叶えてやるよ。
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