最後の雨 81
学生たちの前でハニに振られた形のギョルの様子を、ハニは後からミンジュたちに聞いた。
「あんたたち夫婦には、誰も入り込めない物がある事に気が付いたみたいだよ。」
「ギョルとは付き合いはハニよりも長いけど、大学に入ってからのギョルを知っている人は、彼がハニに本気だったのが判ると思うよ。」
やけ酒を飲んで翌日二日酔いのギョルは、いつものメンバーより離れたところで一日を過ごしていた。
二日酔いになるような飲み方をした事のないギョルの、その姿に付き合いの短いハニには複雑な気持ちになった。
大学からそう遠くはない屋台は、学生たちのグループが幾つにも別れて酒を飲んでいた。
ひとつの4人のグループは、一人の男子学生の飲みっぷりを、一緒にそのテーブルにいた仲間が心配そうに見ていた。
「ギョル、もうその辺にしとこうよ。」
「うるさい!」
空の焼酎の小瓶もギョルの所だけ5~6本はありそうだ。
「最初っから、ハニはダメだって判ってたじゃん・・・結婚しているんだからさぁ。」
ミンジュやヘウンの言葉に何も応えず、ギョルは無言で立て続けに焼酎を飲んでいた。
「おばさぁ~ん~~もう一本!」
「ほら、帰るわよ。ヘウン、お勘定をお願い。」
ミンジュはギョルの腕を自分の肩に廻させて立ち上がらせようとした。
「五月蝿いなぁ・・・・・、ミンジュ・・・・・」
足元がおぼつかないのに、ミンジュの肩に廻された腕を振り上げて、他のテーブルで飲んでいる人たちの方に倒れ込みそうになった。
「おい!気を付けろ!」
「何だとぉ~」
殴り合いの喧嘩をしそうなにらみ合いになると、それまで黙っていたヒスンはギョルとぶつかった人を宥めようと少し前に出て来た。
ヒスンはギョルがぶつかった人にニッコリと笑って気を許してもらっている隙に、ギョルが相手を殴らないようにミンジュが背後から抱え込むようにして屋台の外に連れ出した。
「ごめんなさい・・・ちょっと私たちの友達が失恋しちゃったの。優しそうなあなた達ならきっと許してくれますよね?」
こう言った時のヒスンの微笑みは効果抜群だ。
ヒスンを知っている人の間では、≪天使の微笑≫と言われていた。
どんなに頭に来ていても、大きな目を潤ませて懇願しているヒスンの言うとおりにしておかなければならない気になった。
「ほら、これ飲みな。」
屋台近くの公園のベンチにギョルを座らせ、よく冷えた水を差し出すがそれを受け取ろうとしない。
「ギョルがそんなんだったら、今のこの様子を知らないで明日学校に来たハニが可哀想じゃん。男なら失恋したくらいで飲んだくれないの。私達なら話を聞いても応えられるから・・・・ねっ、言ってごらんよ。ここにいるのはみんな仲間だよ。」
ギョルにも判っていた、
ハニは最初っから自分には特別な感情を持ってはいなかったことを知っている。
「オレ、本気だった。最初は下心あって看護学科に来たと思っていた時は、オレが一生懸命に看護師になろうと思っているのに、コイツは遊び半分かと思うと、ムカついて怒鳴りたくなった。ハニがアイツと結婚していることを知った時、それを認めることはまだその時は出来なかった。採血のテストを何度も何度もやり直しで、普通ならそんな状況なら諦めるのに、ハニは諦めなかった、旦那が医者になるからだけの理由で、看護学科に来たハニに対する気持ちが変わって行ったんだ。」
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