スンジョの戸惑い 3
「お袋!オレに秘密はしていないか?」
「なにがぁ~?秘密って?」
恍けているのか、本当に知らないのか・・・・・・。
いつもお袋は問題ばかり起こす。
「あの写真・・・・魔の写真を誰かに渡さなかったか?」
「渡していないわよぉ?何かあったの?」
グミはキッチンからスンジョに夕食を試食をしてもらおうと、お皿におかずを乗せて出て来た。
何時もなら弟のウンジョが幼稚園から帰って来たら食べさせていた。
「たとえば、最近誰かが来なかったか?」
「ああ・・・来たわよ。ギョンス君が。それでね、DVDをあげたわ。」
「あげた?」
そう言えばお袋、友達と最近映画を撮っていると言っていたな。
「なんのDVDを渡したんだ?」
グミは自分の部屋に行き、またすぐに戻って来た。
「ほら!これよ!ジャ~ン」
自信満々に出したDVDはギョンス先輩の下宿で見たのと同じタイトルの物だった。
「僕の秘密・・・・・」
「お兄ちゃんに似てない?その男の子・・・・・すごく可愛かったの。同じ自主映画作成の仲間からの紹介された男の子なの。」
スンジョは見ていたDVDを取り出し、グミに有無を言わせずに半分に折った。
「全部出せよ・・・DVD・・・・」
「二枚だけよ・・・・・趣味で作っただけだから・・・・・別にいいじゃない。娘が欲しかったのだから、せめて映像だけでも娘を持った親の気持ちを・・・・・ねえスンジョ!どこ行くの?」
スンジョはグミから取り上げたDVDを半分にしただけでは気に入らず、シュレッターに入れて粉々にして裏口にあるダストボックスに持って行った。
またどこからか自分に向けられている視線を感じた。
いつもの視線とは少し違う。
顔を上げて視線の方に向くとやたら愛想のいい笑顔を見せて一人の男が近づいた。
「何ですか?」
「私は、ABCプロモーションのハン・ナムジャと言います。」
怪訝な顔をしてスンジョはその男の名刺を受取った。
「先日、たまたまレンタルビデオの店に、新作のDVDの販促に伺った時に君を見かけて・・・・・・」
「スカウトですか?」
ハン・ナムジャは、これ以上出来ないほどに不自然な愛想笑いをして、スンジョの応えを期待して待ってた。
「タレントは興味がないですから・・・・・」
DVDのことが有ったからではなく、こういったスカウトに対して嫌悪感を持っていた。
幼いころのトラウマで、人前で笑ったりポーズを取って写真に納まることが嫌いだった。
ドアを閉めても聞こえる、「話だけでも聞いて欲しい」と言うスカウトの声がしつこいくらいにいつまでも続いていた。
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