スンジョの戸惑い 4
スンジョは、いつもと違う好奇な視線を感じた。
からかうような、同情するようなそんな視線だった。
ヒソヒソと話す会話で、スンジョの耳に聞こえた言葉は誰の事を言っているのかと思う子様な話だった。
「同情するわよね。」
「知らない方がいい場合もあるわよね。」
「可哀相に・・・・」
もしかして、あのDVDが誰かに見られたか?
レンタルビデオ店に並んでいたから、先輩達以外の人間が借りてそれを見たのか?
教室に入ると、オレを見るなり駆け寄って来たクラスメートに聞かれた。
「スンジョ、お前最近誰かにストーキングされてないか?」
「ストーキング?誰かにいつも見られている気はしたが?」
「同情するよ。」
オレは問い詰めて聞く気もないからそのまま席に座るが、隣の席のヤツが言って来た。
「7組の女には気を付けろ。」
合言葉のように言ってソイツは、今日の課題に取り組み始めた。
どうやら、同情するようなヒソヒソはあの忌まわしいDVDではなく、7組の馬鹿な女の子がオレを好きだということだ。
お袋の事を信じよう。
ストーキングしている女の子は、模擬試験全国一のオレに対してパラン高校の構内テストでほぼ最下位の女の子。
オレの事を好きなら黙っていないで言えばいいのに、それともストーキングをするくらいオレに恨みでもあるのか?
課外授業の時にすぐ傍であの視線をまた感じた。
先生のつまらない話で隠れて本を読んでいたスンジョは、顔を上げてその感じる視線の方を向いた。
後ろを向いていスンジョを見ていたその女の子は、顔を人参みたいに赤くして慌てて前を向いた。
確かに頭は悪そうだが、下心もなさそうでどこか安心出来そうな女の子だった。
その後も何度もその女の子と顔を合ってもすぐ俯いてしまう。
それなのに、いつも一緒にいる背の高いまあまあ可愛いメガネの女の子と太った女の子といる時は、大きな声ではしゃいでいる。
オレが見るだけで顔を赤くするのに、同じ7組のバカそうな男と対等に話もしている。
それくらい元気な女の子なのに、オレには話しかけるどころか目も合わせられない。
それでも、一歩づつ確実にオレに近づいているのがわかる。
カタツムリの様にユックリと。
一日一日確実に近づくその女の子と、何かまた別の空気も近づいて来る気がした。
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