スンジョの戸惑い 6
学祭最終日?
ああ、だから人気投票があったんだ。
学祭の事だって、有ることすらスンジョの頭から排除されていた。
小高い丘の上にあるベンチで、自分には全くそんな事に無関心な様子で本を読んでいた。
丘を駆け上がってくる足音に顔を向けると、同じクラスの学祭実行委員のマが慌てていた。
「スンジョ、人気投票の優勝者だからダンスに参加してくれよ。」
「メンドイ。」
「頼むよ。人数が合わなくてさ。」
「頼まれたくない・・・・・・何するんだ!」
マはスンジョの読んでいる本を取り上げて、腕を引っ張り後から来た他の生徒と一緒に無理やりダンスを始めようとしている所まで連れて行った。
スンジョが来るのを待っていたのか、到着すると音楽がすぐに掛けられ、その輪の中に無理やり入れられてしまった。
背中から近づいてくるいつもの視線。
嫌そうではない。
近づいているのはスンジョの方だ。
クルクルと回りながら相手の女の子が変わっていく。
真綿のような感触がしたと思ったら、自分に向けられていた視線が途切れた。
途切れたのではなく、その視線の女の子がスンジョのところに順番で回って来たのだった。
その女の子の柔らかな手に触れた瞬間、心の奥が暖かくなりピシッと水面に張っていた厚い氷が割れるような音が聞こえた気がした。
ダンスの音楽などスンジョには聞こえていなかった。
恥ずかしそうにうつむいている女の子の顔を見たかった。
上目遣いにその女の子がスンジョの方に顔を上げると、あまりにもその女の子の澄んで綺麗な瞳に、心臓がドキン・・ドキンと大きく動いた。
「君・・・・・・」
そう言うとその女の子は耳まで赤くして、石のように硬くなった。
「おい!スンジョ・・・・交代」
スンジョの前にいるクラスメートが手をひらひらとさせてその女の子の手をとった。
【イラッ!】
<何だよアイツ、.あの女の子にあんなに接近して・・・・・似合わないんだよ。お前の脂ぎった顔では、鏡を見たことがあるのか?>
だんだんとその女の子が自分から離れて行くと、無性に意味もなく腹が立ってきた。
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