スンジョの戸惑い 7
初めて感じる胸の鼓動。
相手が変わり、音楽に合わせて離れていく。
トクントクンからドキドキに変わり、またトクントクンになった。
チラチラとオレを意識し見てている視線。
またアイツだ。
握った手を必要以上にしっかりと握り締めて、あの子が顔を向けると、ニヤケた間抜けな笑顔で覗き込んだ。
その子はお前よりオレに興味があるようだぞ、ポン・ジュング。
人気投票の表彰式をすっぽかしたオレに、最近は射るような視線が有るのに気付いた。
女子の優勝者の熱狂的なファンらしい。
他人など、全く興味がないからその視線も気にならない。
気になるのは、あの子の視線だけ。
近づいては離れる暖かな視線。
1組の雰囲気には、4組以降の人間には近付けない物があった。
それでも、時々振り返ると栗色の長い髪の毛が見えていた。
今日は、すぐ後ろだ。
学校の中でもここは人気(ひとけ)が殆んど無い。
スンジョは、角を曲がって壁にもたれた。
その視線の元が角を回って・・・
「キャッ!」
「何が、キャッ!だ。オレに何か・・・」
その女の子がスンジョにぶつかった時、ほのかに香るシャンプーの甘い香り。
スンジョはその甘い香りに気が遠くなりそうになったが、女の子がスンジョの身体から離れるとハッと我に返った。
その女の子は、恥ずかしいのか・・・・多分、恥ずかしいのだろう、耳まで真っ赤だ。
「あの・・・・・・これ・・・」
差し出した黄色い封筒は、中々オレに渡せなかったのか少しヨレッとしていた。
廊下を誰かが話ながら歩いて来る。
めったに誰も来ない場所なのに。
見られたら面倒だ。
咄嗟にオレはその女の子の手を引き、使われていない教室に入った。
スンジョは自分を守るためでもあったが、無意識にその女の子を守る様に抱き締めていた。
「確か・・・こっちに来たよなぁ・・・」
この子を探しているのか?
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