スンジョの戸惑い 10
ハニは今まで、椅子に腰かけて机に向かって勉強をしたことが有るのだろうか?
小学生のウンジョの方がまだ良くできるかもしれない。
だけど、何故かハニを放っておけない。
他人に勉強なんて教えた事がないし、他人に何かをしてあげようと思ったことも無い。
ウンジョの勉強を見ていた事もあるが、教えなくてもウンジョは理解していた。
オレがどんなに怒鳴っても、時間は人の何倍も掛かるけど確実に理解をしている。
一つづつ今まで解らなかったことを理解できて、自分自身に感心しながら、オレが説明をすると初めて聞くような顔をしている。
平凡な特別に特徴がある顔でもないのに、真っ直ぐな気持ちで取り組んでいる時の表情は綺麗だ。
「えっ?」
「何でもない。サッサとやれ!時間がないぞ。」
「うん!」
ハニの笑った顔に何故か、心臓がドックンと大きく打った。
なんだ?この感覚は・・・
ハニが栗色の長い髪を後ろにはらった時に香る甘いシャンプーの香り。
白くて細くて滑らかな首筋。
また、心臓がドックンとした。
「スンジョ君?」
「さあ、続きは月曜日だ。」
「あっ!来られないかもしれないよ。明日、家を引っ越すから、片付けがあって・・・・」
「まあ、来られるようになってからでいい。オレは、いつでもここにいるから。」
まるで小学生に勉強を教えている先生のような言い方のスンジョに、とても高校生とは思えないハニの学力。
よくこんな学力で高校が受かったもんだと思った。
学力重視の学校ではない訳ではない。
私立高校で幼稚園から大学まである総合学園でも、毎年難関大学や海外の大学に合格している人数は国立テハン大に続くかずだ。
「おい!何でこの学校を選んだんだ?」
「制服が可愛いから。ただそれだけ。」
だろうと思った。
それでも受かったのだから多少は勉強したのだろう。
呆れるよりかえってここまで勉強が解っていないのを知ると、可哀想に思えてきた。
だけどそんなハニがまさかオレと・・・・・・
家族での静かな夕食の時間。
いつもはお袋が一人でスンジョや学校でどうだったかとか、ウンジョもう少し運動もしないと太ってしまうだとか一人で話している。。
こんなにお袋以外誰もしゃべらない団欒ってあるのか。
そんなオレ達を見て、女の子がいればもっと楽しいのに、などと話しているのが日課みたいになっていた。
それが珍しくお袋が何も言わずにただニコニコと笑っていたのが、ああそういうことだったのかと後になってから思った。
「実はな、パパの親友が見つかったんだ。」
人探しなどしているなんて、今まで一度も聞いたことが無かった。
オレが黙っていればウンジョもしゃべらない。
「その親友の家が今日の震度2の地震で、家が壊れてしまったんだ。それも新築の家でな。」
随分と手抜きの酷い工事だな、震度2の地震で壊れるなんて。
「その親友にうちの空いている部屋を貸そうと思うんだが、いいかな?スンジョにウンジョ。」
「別にいいよ、そんなことオレが聞くことでもないのに。」
お袋の目が輝いた。
「まあ!そうなの、いいのね。ちょうどその方はスンジョと同じ歳のお子さんがいらっしゃって、なんという運命なのかスンジョと同じ高校なの。」
「いいんじゃないか?」
「女の子でね、オ・ハニっていう可愛い女の子なのよ。」
何だって?あのオ・ハニだって?
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