スンジョの戸惑い 11
お袋はいつの間に写真を撮っていたのか、ハニの写真を何枚もリビングのテーブルの上に得意気に広げているのが何かの前触れのような気がした。
そのほとんどが、盗撮だった。
「またいつもみたいに目立つ変装をして写していたのか?」
「あら!いつも目立っていたかしら?」
お袋は自分の服装がいつも普通だと思っているところが怖い。
目立たないようにして大きなサングラスに帽子は、目立たないと思っているのは自分だけで誰が見ても目立つ。
今日だって、変な人がカメラを持って学校の周辺をうろついていると生徒たちが騒いでいた。
運がいい事に、オレの親だとは誰も気づいていない。
いや絶対に、誰にも気づいて欲しくなんか無い!!
学校に行くと、いつもハニに蜘蛛の巣のようにまとわりついているポン・ジュングが、なにやら声を張り上げていた。
「今年の人気投票で女子の部で優勝したオ・ハニ姫が、悪質業者の所為で家が崩壊して惨めな生活をせなあかんようになって・・・・・・おい!!そこのお前!」
無視して通り過ぎようとした時、オレを大きな声で呼び止めるから、嫌々立ち止まってやった。
「オレか?」
「おう、お前や!ペク・スンジョ!!人気投票の相方が大変な目に遭ったんや。可哀相と思わんか?」
「気の毒だとは思うが、特に何も思わない。それに相方って、別にコンビ組んで何かをやっているわけでもないけどな。」
「お前が・・・お前が、表彰式をすっぽかしたからやぁ~~~~。」
ハニがオレの方を向いて申し訳なさそうにして、ジュングの腕を引っ張って台の上から降ろした。
「オレの所為?関係ないだろう・・・・・まぁ、同じ学校の生徒だから協力くらいはしても・・・・・・・」
財布からお金を出して募金箱に入れようとした時、ハニがその紙幣を押し退けた。
「ジュング辞めて・・・・・人に募金してもらって困るよ。それに私そんなに惨めに思っていないから。人に施しをしてもらうなんて、本当に嫌なんだからもう辞めて・・・・」
そりゃぁ惨めに思っていなくても、こんなに大勢の人の前で、震度2の地震で新築の家が壊れたとかポン・ジュングの大きな声で聞かされれば、誰も惨めじゃないとは思わない。
それよりも、こんな風に人前で募金活動をされるほうがよっぽど惨めだろう。
ジュングは勝手に学校で募金活動をしていることを、教頭に見つかって散々しかられていたらしい。
まったく7組はバカだな。
ハニが来る事が決まってから、お袋がウンジョの物を全部オレの部屋に移動し始めた。
ウンジョは、止められないお袋の行動に必死な様子でオレに訴えて来た。
「お兄ちゃんと一緒の部屋で嬉しいけど、知らない女の子に部屋を取られたのが嫌だ。」
いくらウンジョが抵抗して部屋の入り口を塞いでも、暴走しているお袋を止めるどころか、学校から帰るたびに、家具やら大量のピンクにレースの物を取り付ける為に業者が入って、ウンジョの部屋が吐き気がしそうなほど女の子だという主張をしている部屋に変わって行った。
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