スンジョの戸惑い 12
スンジョは、いつものように自分の部屋で本を読んでいた。
夕食が終わるといつも静かなリビングが、来客があったのか急に騒がしくなって来た。
「お兄ちゃん・・・なんかうるさいね。」
「ああ・・・・今日は、パパの知り合いが引っ越して来るって言ってたからな。」
本から顔を上げずにウンジョに話した。
「僕、見てこようかな。お兄ちゃんどうする?」
「お兄ちゃんは本をまだ読んでるから・・・・・・」
幼いウンジョは来客があるといつも偵察してくるのが楽しみだ。
こんなところは母親似なんだな、とスンジョは思っていた。
ハニは知っているのだろうか、ここがオレの家だということを。
お袋の嬉しそうな声が二階のオレの部屋まで聞こえる。
いつも男ばかりの家で楽しくないだとか、オレに彼女は出来たのか、出来たらうちに連れて来てだとか・・・・・
仕方がないよな。
まだ高校を出たばかりの頃に、親父と結婚して直ぐにオレが産まれたのだから。
友人と遊びに出掛けたくても友人たちは大学生で、そんな中に赤ん坊のオレを連れて一人ではどこにも出られなかったから。
親父が甘やかした所為か、どこかまだ考えも顔も幼くて、オレと兄弟だと思われたりする。
この家にスンジョがいる事に、ハニが驚いた顔を想像するだけで、なんだか可笑しくてスンジョは誰もいない部屋で声を漏らして笑った。
まだこの時は自分の中で何かが変わっていることに、スンジョは気が付いていなかった。
ウンジョの小さな足音が、トントンと跳ねるように上がって来た。
ウンジョが、下にいる大人たちに嬉しい事が気がつかれない様に静かにドアを開けた。
「お兄ちゃん、向日葵みたいな女の子が来たよ。それでね、ママが挨拶にいらっしゃいって。」
「ああ・・・・今行くから、ママにそう言って来て。」
ウンジョはハニが気に入ったのか、嬉しそうな顔でまた急いで階段を下りて行った。
「初めまして。」
親父が座っているソファーの後ろに立つと、親父の親友とハニは、話すのを止めてオレの顔を見た。
「おお・・・来たか、こっちに座りなさい。長男のスンジョです、ギドンの娘さんと同じパランの高校の一年だ。」
ハニは親父がオレの名前を言った時に、驚いて顔を上げ口が開いたままだった。
おいおい・・・・年頃の女の子が喉の奥まで見せるなよな。
「初めまして・・・・学校では会ったことが有るかな?」
オレはハニに、何も言うなよとアイコンタクトしたが判ったかな?
「え・・・・・えっと・・・・あの・・・・」
ハニはどう応えていいのか判らずしどろもどろだった。
「悪いねスンジョ君、しつけの出来ていない娘で挨拶も出来ないんだ。」
「ギドン・・・・気にするなよ。お前は仕事で忙しくて、母親の代わりなんて出来んだろう。」
ハニの母親はいない。
それは以前にハニが言っていたのは覚えていた。
いまどき両親が揃っていたって、まともに挨拶が出来る子なんて、そんなにいるわけない。
ハニはただ、引っ越してきた家にオレがいて驚いているだけさ。
「お兄ちゃん、同級生なんだからハニちゃんの部屋に案内してあげて。ハニちゃん、荷物はお兄ちゃんが運んでくれるから、一緒に行ってきたら?」
「あ・・・はい。」
オレが目で合図をすると、ハニはオレに付いて来た。
「この部屋だ。」
ドアを開けて久しぶりに見たウンジョの部屋。
落ち着けそうに無いようなピンクやらリボンやらレース・・・・・・
この間より更に凄くなっていた。
そっとスンジョがハニの方を見ると・・・・・ハニは驚いていた。
「うそ・・・・・・・これが私の部屋?」
「嫌ならお袋に言え・・・・こんなに・・・・」
「夢見たい・・・・・・・」
夢見たいだろうな。
だけどそういったハニの目は、まるで星が存在するのかのような輝きだった。
うそだろ・・・まさか、こいつはお袋と同類か?
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