スンジョの戸惑い 17
他人など興味もなかったオレが、わずかな間に随分と変わったもんだ。
オレが変化し始めたのは、誤字脱字の多い手紙を貰った時からだった。
毎日誰もいない教室で、他人に勉強なんて教えた事のないオレが、オ・ハニに勉強を教えるなんて思いもしなかった。
だけど、どうしてかな?
頭が悪いやつは嫌いだったのに、この勉強などしたことのないバカな女に教えるのが結構楽しい。
オレも勉強などしたことがなかったが、この子はオレが一つづつ教えるたびに感動したり、初めて耳にする内容に驚いて声を挙げていた。
1分もかからない数学の基礎問題を、一時間かけてでも解こうとするのには感心した。
「お前、そんなに勉強が出来なくて毎日学校に何しに来ているんだ?」
「一応・・・・・・・勉強をしに来ています。三年になるまでには何とか出来るようにがんばります。」
「何で三年なんだよ。そんなに時間を掛けて基礎問題をやるつもりか?」
「コツコツやれば、併設の大学に行けるかなぁ・・・・なんて。」
「大学、大学って何しに行きたいんだ?勉強が好きなのか?」
「大学って勉強ばかりしに行くのじゃないよ。いろんな人と出会って、ああこの人はこんなことを考えているんだとか、私はどんなことをしたら良いのかって、興味のあることを探しに行くの・・・・・いろいろ考えたら楽しくない?」
「楽しくない・・・・・・勉強なんて、一人でも出来るだろう。本を読んでれば頭に入るから。」
「一度っきりしかない青春を楽しまないと・・・・ね?」
ハニの口は良く動く。
次から次へと、勉強以外の話が良く出てくる。
「ミナとジュリとは小さい時からの親友なの。そう言えば、スンジョ君っていつも一人だけど・・・・・・・・」
「友達なんて要らないだろう。さあ、次の問題をやってみろよ。」
「は~・・・・・・・・・」
ハニが返事をしようとした時、廊下を誰かが歩いて来るのが判った。
咄嗟にハニの口を大きな手で塞いで机の下に隠れた。
「静かにしてろよ。」
使っていない部屋に無断で入ったことが判ったら、いくら先生に信頼されているスンジョでも厄介だ。
「本当に誰かが、この教室に入っているんだな。」
「はい先生。いつも髪の長い女の子がこの教室に入って行くのを見たんです。」
教室のドアが開くと、先生に付いて生徒も入って来た。
段々、机の下に隠れている二人の方に先生と生徒が近づいて来た。
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